「ジョージア、ワインが生まれたところ」と「ワインコーリング」の2本のドキュメンタリー映画が同時公開され、将来のワインについて色々と考えるきっかけとなりました。
ワイン発祥の地といわれるジョージア、究極の自然派ワイン
2013年世界無形文化遺産に登録された、伝統製法の希少なワイン造りを続ける国、ジョージアのドキュメンタリー映画「ジョージア、ワインが生まれたところ」。
紀元前6000年にさかのぼる世界最古のワイン醸造の起源をもつ国です。カスピ海と黒海に挟まれた南コーカサスの地ジョージアはロシアやトルコに隣接し、ヨーロッパとアジアの交差点にあります。2015年まで「グルジア」とよばれていました。旧ソビエト連邦の構成国だった悲しい歴史があり、ソ連の占領下でソ連式大量生産、土着品種の削減や禁酒法など伝統製法が制限されていました。
現在は伝統製法を守り、少量ですが「究極の自然派ワイン」を造り続けています。
ジョージアでは昔はどの家庭でも自家製のワインを造っていた歴史があります。(昔の日本のどぶろくのようです) 大きな卵型の素焼きの壺のような「土器の甕(かめ)クヴェヴリ」を石造りの蔵の地中にすっぽり埋めて、発酵し貯蔵まで行います。地中に埋めることで温度が安定し、ぶどうの果皮や果梗、種も一緒に「かめ」に入れることでタンニン成分が多いのが特徴です。
ぶどう畑は雑草がたくさん生えて、まさに自然のまま、農薬や化学合成肥料を極力使わない土壌で栽培しています。醸造も自然のまま、ぶどうが野生酵母に頼って自ら発酵するように添加物を加えていませんでした。なにやらこの地元の土から造った「素焼きのかめクヴェヴリ」に秘密があるのでは?と思いました。
「大量生産はジョージアには合わない。ジョージアらしい伝統製法を守り、自然派ワインを造り続けることが大切です」というメッセージが響きました。昔ながらのぶどうの固有種を見つけ出し、栽培する試みなど、失われた伝統を大切にしていました。他のヨーロッパワインの生産と異なる、この伝統製法のワインはまさにジョージア人のアイデンティティそのものだとおもいました。
ジョージアでワインを意味するgvino(グヴィーノ)はワインの語源にもなっています。
フランスワイン界に革命を起こす自然派ワインの生産者
南フランス、ルーション地方(ラングドック地方)の自然派ワインのパイオニアといわれる生産者のドキュメンタリー映画。
とかく商業的になりがちなフランスのワイン界には珍しい自然派ワインにこだわる生産者が自然と向き合い、苦難を乗り越えていく姿が感動的でした。どんなに手間がかかっても、作る人、飲む人の体に優しいワインを造り続ける姿を描いています。この映画をみて、いかに今までのワイン生産が商業的な方向に走っていたかに気が付きました。
農薬を散布するときは生産者の健康を危険にさらし、消費者はその農薬に影響されたワインを飲む。
農薬や化学肥料をたくさん使うと生産効率があがり、たくさん収穫でき、ワインがたくさん生産できます。商業的には良いですが、長期的に考えると、土壌は農薬で汚染され、数十年後には同じようなぶどうは収穫できなくなります。ぶどう畑は雑草一つなく、ぶどうの樹がきれいに整列されています。
農薬や化学肥料を使わないと畑の管理に膨大な時間と手間がかかり、添加物をあまり使用しないとバクテリアなど発酵のトラブルがおきる危険性が高まるというリスクがあります。
ワインの未来を考えると自然派ワインは今後増えてほしいと思いました。
我々の造るワインはAOCではvin de table (テーブルワイン)になり、今はあまりその価値を認められていないけど、未来のために造り続ける。 そのうち大手も自然派ワインを造る日がいつかは来ると思う、でも我々には長年積み上げたノウハウがあると。
まとめ
少しずつ有機栽培についての関心が高まり、先日ボルドーワイン委員会も積極的に取り入れ始めたとおっしゃっていました。今、フランスのワイン界の関心は「ビオ」と「地球温暖化」です。どちらも自然を相手にする難しい問題であり、それぞれのワイン産地が取り組み始めています。特に生産量の多い産地では取り入れるのは難しく、有機栽培には数十年もかかるかもしれません。無農薬、無添加物というよりはそれらをより少なく使い、その落としどころをそれぞれ見つけてほしいと思います。
安いワインにはリスクがあることを認識させられました。
この2本の映画で印象に残ったのはどちらも生き生きと楽しそうにワインを造っていることです。お金のためでなく、楽しみのためにワインを造っている姿でした。
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