すでに30年ほど前からぶどうの成熟過程に変化が表れている「地球温暖化」によるワインへの影響について
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以前よりぶどうの成熟が早くなり、糖度が増し、酸味が低くなる
伝統的な栽培地域で今までより成熟が早くなっています。最近は早すぎる現象も起きています。ブルゴーニュでは感覚的には昔より約1か月くらい収穫が早くなっていると言われました。ここ30年では実際は2週間ほど早くなっていることがわかっています。(ボーヌの教会に保存されていた700年分の記録簿からまとめた結果)
その結果ぶどうの糖度が上がり、出来上がるワインのアルコール度数がどんどん高く、酸味が低くなっています。特に重々しいワインになりやすいフランスの南部、スペイン、イタリア、オーストラリア、アメリカの一部では温暖化は悩ましい問題となっています。
ワインの爽やかさをどう保つか?葉の残し方、収穫時期、品種の性質もこの温暖化の変化に適応させる必要性が出てきました。アルコール度数を下げるにはぶどうの収穫を早い時期に行うことですが、糖度だけを考えると果実のうまみがないワインになってしまいます。
コートデュローヌの南部ではすでに温暖化に取り組んでおり、ぶどうとぶどうの樹の間に別の木を植えて影を作るなど工夫しているとのことです。
北の栽培地域では温暖化が好機になっている
反対に北の栽培地域にとっては思わぬ好機となっています。
シャンパーニュ地方では以前のようにぶどうが十分に成熟するかどうかという心配が不要になっています。
ブルゴーニュでは、フランス全土を熱波が襲い、気温が38℃を大きく超えた年でも、高い丘と高緯度のおかげで生き延びることができました。ブルゴーニュより南に位置し、平地のボルドー地方は影響が大きいのではと心配になります。
イギリスでは寒冷な気候から自国での良質なワイン造りは難しいとされていました。ところが前代未聞といえるほどぶどうが生育するようになりました。冷涼な気候や土壌を活かした、イギリス産のスパークリング ワイン が注目されています。イギリスは今までもっぱらワインの消費国として、ワイン産業やワイン市場に大きな影響力を与えていました。
半世紀後にはぶどうの栽培地図は変わっているかもしれません。
ボルドーAOCとボルドー シュペリユール AOCでは温暖化の影響で複数の新品種を認定
2019年6月にボルドーの補助的品種として赤ワイン4種、白ワイン3種が追加でフランス政府の許可のもと認められることになりました。
近年の温暖化でボルドーの主力のメルローは早期に熟し、糖度が上がりすぎる傾向がみられ、補助品種の導入によって補正することができます。
気温が高くてもゆっくりと熟すぶどう品種を追加導入します。
ボルドーでは複数のぶどう種をブレンドするアッサンブラージュを行っているため、ボルドーのスタイルを維持するために、5~10%ほど導入することが認められました。実際には2021年ヴィンテージからとなります。
追加された新品種
赤
Arinarnoa(アリナルノア)
Touriga Nacional(トリーガ・ナシオナル)
Castets(カステ)
Marselan(マルセラン)
白
Alvarinho(アルヴァリーノ)
Petit Manseng(プティ・マンサン)
Liliorila(リリオリラ)
アメリカのカリフォルニア州でも温暖化によりアルコール度数が高くなっていますが、水を追加してアルコール度数を下げています。フランスではワインに水を追加することが禁じられているため新品種を追加しました。最近のワインのトレンドが力強さより、エレガントさのため、新品種の導入につながりました。
まとめ
比較的北の産地であるブルゴーニュは昔ほど悪天候で極端に不作のヴィンテージがなくなりました。ヴィンテージチャートをみても、近年は評価が高いヴィンテージが続いています。今は温暖化はブルゴーニュには好機になっていますが、これ以上温暖化が進むと、半世紀先は分からなくなります。北欧産のワインができるかもしれません?と考えると地球温暖化の問題は身近なワインにも大きな影響を及ぼしていることがわかります。
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