ブルゴーニュより更に北に位置するシャンパーニュ(Champagne)地方で造られる発泡ワイン「シャンパン」。日本でも大人気のシャンパンの特徴について。ワインとこんなに違う特徴があります。
目次
シャンパン(シャンパーニュ)とは
フランス最北端のワイン産地であるシャンパーニュ地方は涼しく、厳しい気候条件がぶどうにシャープな酸をもたらし、地下に掘られた無数の洞窟が、現在も冷たく湿った石灰質のセラーとして使われ長期熟成を可能にしています。これらが、シャンパーニュ地方に他に類を見ない独自性を与えています。
シャンパーニュ地方で造られた発泡酒のみが「シャンパン(Champagne シャンパーニュ)」と呼ばれ、その他で造られた発泡ワイン「スパークリングワイン」とは分けて呼ばれます。 発泡ワインはスパークリングワインと呼ばれますが、その中でシャンパーニュ地方で造られたもののみが「シャンパン」と呼ぶことを許されます。正式にはシャンパーニュですが、日本やアメリカでは短くして「シャンパン」と呼ばれます。
その他のスパークリングワインは、イタリアの「プロセッコ」「スプモンテ」、スペインの「カバ」、フランスではシャンパーニュ地方以外で造られたものは「クレマン」と呼ばれます。
歴史、シャンパンの誕生、セレブの飲み物に
シャンパーニュ地方でぶどう栽培がはじまったのは5世紀末。パリに近いこともあり9世紀にはピノノワールによる軽やかなロゼワインが王侯貴族に好まれました。ところが15世紀半ばから、対抗するようにブルゴーニュ、同じピノノワールの赤ワインがパリの宮廷で人気になり、最終的にはルイ14世がブルゴーニュワインを好み、「王のワインはブルゴーニュワイン」となりました。
一方シャンパーニュ地方では当時小氷河期ともいわれ、地球が急速に寒冷化していたため、発酵途中でも冬の低温によって酵母の活動が停止、その状態で樽に詰め売却されたワインは翌春に気温の上昇とともに再発酵し、味の変質やにごりなど不評を買うという問題を抱えていました。
オーヴィレ―ル修道院の僧、ドン ピエール ペリニヨンがシャンパーニュ地方に着任、イギリスのビールにヒントを得て、シャンパーニュを瓶詰し、コルクを糸でからげ、泡立つワインを造りだしました。ルイ15世が瓶詰出荷を許可し、シャンパンのメゾン(製造会社)の立ち上げが始まります。
フランスの王たちは、当時シャンパーニュの生産地であるランスの大聖堂で戴冠していました。地元産で品質が良いことから、シャンパーニュは戴冠式の晩餐会でふんだんに振るまわれたと言われています。その地域を訪れる王族たちに供すのが慣しになりました。いつの間にかフランスでは戴冠式の酒となり、結果的にヨーロッパ中の王族の間でファッショナブルなアイテムになりました。
19世紀になるとイギリスにも広まり、ロイヤルウエディングから上流階級のパーティまで、イギリスにおける主要な行事では必ずシャンパンが振る舞われるようになりました。
シャンパンに使われる3つの主要ぶどう品種
フランスのワイン法によりシャンパンに使われるぶどう品種は7種ありますが、ほとんどが下記の3種で造られます。
ピノノワール種(黒ぶどう) :力強さと肉付きがあり、シャンパンの骨格や重厚さを担います。長期熟成向き
シャルドネ種(白ぶどう): 酸味とミネラルを持ち、清涼感や繊細さを表現します。長期熟成向き
ムニエ種(黒ぶどう): 穏やかなフルーティさが特徴で丸みや柔らかさをもたらします。早く飲み頃を迎える
これらのぶどう品種をブレンド(アッサンブラージュ)して造られます。
白ぶどうのみで造られるのが「ブランドブラン」、黒ぶどうのみで造られるのが「ブランドノワール」とも呼ばれます。シャンパンはぶどうの中心部のみ使うため、黒ぶどうも皮の部分の色がつかなく、白いブドウ果汁を使います。残ったぶどう果汁はリキュールなどに使われます。
また人気の「ロゼ」は白ワインに赤ワインをブレンドする方法と、黒ぶどうからロゼの色合いを抽出する方法があります。生産量は全体の10%と少なく希少です。
シャンパン メゾンによる異なるブレンド(アッサンブラージュ)技術
フランスぶどう栽培の最北の地にあり、不安定な収穫の量や質を克服するために複数のぶどう品種によるブレンド(アッサンブラージュ)が行われるようになりました。このブレンド技術はメゾン(製造会社)の秘儀とされる技術であり、各メゾンの味わいがきまります。数10~100種類の原酒を備蓄しブレンドし、最高のパフォーマンスを表現します。
多くのメゾンはヴァン ド レゼルブといわれるカーヴにストックしてある前年までの原酒をブレンドに用います。古いヴィンテージのワインを加えることによって更に複雑な香りと味わいがもたらされます。
NV(ノン・ヴィンテージ)とヴィンテージ(ミレジム)シャンパーニュ
複数年のぶどうがブレンドされることで収穫年表示のないNV(ノン ヴィンテージ)シャンパーニュが全体の80%となります。ラベルに収穫年を記載していないシャンパンはNVになります。瓶詰から最低15カ月の熟成が義務付けられています。しかし実際には規定より長く熟成させるのが一般的です。
天候に恵まれた年には多くのメゾンがヴィンテージ(ミレジム)を造ります。天候が悪ければ造らない年もあります。単一年のぶどうで造るシャンパーニュで、ラベルに年号が付記されています。瓶詰から最低3年の熟成が義務付けられています。生産量も少なく非常に高価なシャンパンです。
AOCシャンパーニュ
現在AOCシャンパーニュは319の村に認定されています。グランクリュは17村のみです。
グランクリュに格付けされている村の畑のワインのみを用いたシシャンパンは単一村でも複数村のブレンドでも「グランクリュ(特級)」をラベルに表示できます。プルミエクリュは90%以上のクリュを用いた場合に表示できます。
プレスティージュシャンパーニュ(Prestie Champagne)は作り手がその威信(プレステージュ)をかけて造るトップキュベ、高級レンジのシャンパンです。明確な規定はありませんが、瓶詰後に長期熟成が可能です。
コスパの良いおすすめシャンパーニュ
シャンパーニュの製造工程
圧搾(あっさく)と一次発酵 :収穫後すぐにぶどうは圧搾され木樽またはタンクで一時発酵を行います。樽香が付かないようにブルゴーニュなどの古樽を使用することが多いようです。
ブレンド(アッサンブラージュ Assemblage):一次発酵したワイン(原酒)を各メゾンのイメージに沿って調合します
瓶詰(ティラージュ Tirage) : ブレンドしたワインに酵母と糖分を加え、瓶詰しカーブに寝かせます
瓶内二次発酵と動瓶 (ルミュアージュ Remuage) : 瓶の中で酵母が糖を分解して、アルコールと二酸化炭素に変えます。澱(おり)下げ台に瓶口を下に向けて並べ、毎日少しずつボトルを回転させて澱を瓶の口に集めます
澱抜き(デゴルジュマン Degogement) と補酒(ドザージュ Dosage): 瓶の口に集められた澱を取り除き、それにより減った分だけリキュールワインを継ぎたします。リキュールの糖分によりブリュットなど甘辛度が決められています。
コルク密栓(ブッシャージュ Bouchage) : コルクを打って針金で固定します。5気圧以上となるため、ワインに比べ厚めの瓶に入れ、コルクはワインのものより太いものを使います。コルクは筒状ですが、機械で瓶の口に収められ、開けたときはキノコの形になります。
シャンパーニュの甘辛度
補酒(ドザージュ Dosage)による糖分の補てん量によって6つに分類され表記されています。近年の温暖化により、原酒に含む糖分が多くなっており、糖分の補てん量は少なくなっています。今日生産されているシャンパーニュの8割はブリュットです。
ブリュットソバージュ(無糖)
エクストラブリュット(極辛口)
ブリュット (辛口)
セック (中辛口)
ドゥミセック (中甘口)
ドゥー (甘口)
まとめ
日本はシャンパーニュの輸出先として第4位になっており、ますます人気が高まっています。お祝いの時にアペリティフとして、乾杯の時のイメージですが、実はとても奥が深く、知識を得ると興味は尽きません。お料理に合わせていただくこともできます。また価格レンジも非常に幅広く、一度は味わってみたい高級なものもあります。多くの著名人をとりこにしている理由がわかります。
日本では高級シャンパンの代名詞になっているドンペリニヨンですが、シャンパーニュの誕生に貢献した修道院の僧の名前です。ちなみにシャンパンのドンペリニヨンはモエ エ シャンドン社がペリニヨン修道士へのオマージュとして誕生させたシャンパ―ニュです。
フランスではブルゴーニュワイン、ボルドーワイン、シャンパーニュと全く異なるワインを世界中に輸出しており、歴史の中できちんと差別化し今に至るところが素晴らしいと思いました。
シャネルの創始者のココシャネルの名言「私は二つの時にしかシャンパーニュを飲まない。恋をしている時と、してない時。」シャネルをも虜にしていました。
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