ブルゴーニュワイン好きな方でも、よく耳にして気になるボルドーワイン。フランスの2大ワイン産地です。ブルゴーニュワインとまったく異なる特徴のボルドーワインについて。
ボルドー地方は大西洋に流れ込むジロンド河の右岸と左岸に分かれる
ブルゴーニュは5つの異なる地区に分かれ、それぞれ特徴のあるワインを生産しています。
同じようにフランスのワイン産地として有名なボルドー地方は大西洋に流れる大きなジロンド(Gironde)河を挟んで右岸と左岸に分かれます。ボルドー地方は西側に大西洋が広がるため、ジロンド河は北が上の地図のまま、分かりやすく「向かって右が右岸」、「左が左岸」となります。
正確には2つの河、東の中央山脈から流れるドルドーニュ(Dordogne)河と、ピレネー山脈から流れるガロンヌ(Garonne)河が合流して大西洋に流れるジロンド河になります。
ドルドーニュ河からジロンド河にかけての右側が「右岸」、ガロンヌ河からジロンド河にかけての左側が「左岸」となります。また、ドルドーニュ川とガロンヌ川の間の地域はアントル・ドゥ・メール地区と呼ばれます。
ボルドーという名前はフランス語の au bord de l’eau(オーボードゥロー)=水のほとりから来ており、3つの大きな川(ジロンド、ガロンヌ、ドルドーニュ)流域に広がる温暖な海洋性気候(平均気温13℃)に恵まれたワイン産地です。海洋性気候、大西洋の影響、温暖という特徴が、北に位置するブルゴーニュと大きく異なる点です。
大きな川があったことで水運で世界に届けられたことも早くからワイン貿易が盛んになった一因です。昔から主にイギリスへの輸出が盛んでした。
また河を中心に広がっている地区のため、比較的平坦な土地が多く、サンテミリオンの最も高いところで標高わずか100mです。ブルゴーニュのグランクリュクラスが標高250-280mと比較するとかなり低いことがわかります。
主に生産されているのは黒ぶどう(赤ワイン)で89%, 白ぶどうは11%とかなり少ないのも、白ワインの生産の方が多いブルゴーニュと大きく異なる点です。
右岸と左岸の土壌の違いにより味わいの特徴が分かれる
右岸と左岸で土壌の特徴が異なるために、分けて考えられます。ワインの女王が君臨する土地ともいわれる、広いボルドー地方も右岸と左岸で分けて考えると理解しやすくなります。土壌の違いは味わいの違いとなります。
左岸はガロンヌ川が上流の山脈から岩のかけらを運び、流れていくうちに砂利となったため、「砂利質土壌」となり、砂利が太陽の熱をためるため保温性が高く、水はけがよく、ぶどうがじっくりと熟してくため、収穫の遅いカベルネ ソーヴィニョンがよく育つ土壌です。そのため左岸の赤ワインはカベルネ ソーヴィニョン主体のものが多くなります。カベルネ ソーヴィニョンはタンニンが非常に強く、パワーのあるワインを造りだします。左岸の赤ワインは骨格のはっきりした強健なワインが多くなります。
右岸は、ドルドーニュ川が上流から粘土質の土を運び堆積しているため、主に「粘土質土壌」で保水性が高く、土がひんやりとしていて、早く熟するメルローが多く植樹され、よく育つ土壌です。そのため右岸の赤ワインはメルロー主体のものが多くなります。メルローは、タンニンは控えめでふくよかで柔らかく、豊かな果実味が特徴です。右岸の赤ワインはメルローらしい豊満なワインとなります。
また、右岸と左岸に挟まれたアントル ドゥ メール地区(ドルドーニュ川とガロンヌ川の間の地域)は主に「石灰岩土壌」となります。表土は薄く、ぶどうの根が岩盤まで到達し、石灰岩が水の供給を調整する役割を果たします。タンニンは控えめ、ワインにフィネスをもたらし、酸味が強い。主にソーヴィニョン ブランを使った白ワインを造っています。
土壌に合わせてぶどう品種を変えているのは、ブルゴーニュと同じですが、異なるぶどう種をアッサンブラージュ(ブレンド)するのがボルドーの特徴で、単一品種のブルゴーニュと異なるところです。
反対にボルドーは単一品種のワインはほとんどありません。品種の異なるワインや、畑の異なるワインが相乗効果を生み出すように組み合わされ、より優れた品質のワインになるとされています。
違いや特徴を理解した上で、ブルゴーニュとボルドーを飲み比べてみるのも面白いと思います。
左岸の3つの有名地区
ボルドーは主に5つの地区でランク付けが行われており、左岸に3地区、右岸に2地区となります。
また5大シャトーなど超有名なワインは左岸に集中しています。右岸との違いは砂利質土壌であることです。
●メドック地区 Medoc
歴史あるメドック5大シャトーのうち4大シャトーが点在する地区
AOC
メドック Medoc
オーメドック Haut-Medoc
サン テステフ St-Estephe
ポイヤック Pauillac
サン ジュリアン St-Julien
ムーリー Moulis
リストラック Listrac
マルゴー Margaux
●グラーブ地区 Graves
ボルドーのワインが最初に造られた地区, 少量ながら高級白ワインも生産している
AOC
グラーブ(Graves)
ぺサック レオニャン(Pessac-Leognain)
●ソーテルヌ地区 Sauternes
貴腐ぶどうによる世界最高の甘口ワイン産地、貴腐ワイン(甘口白)の銘醸地
AOC
ソーテルヌ Sauternes
バルザック Barsac
5大シャトー
シャトー ラフィット ロートシルト(ポイヤック)
シャトー ムートン ロートシルト(ポイヤック)
シャトー マルゴー (マルゴー)
シャトー ラ トゥール(ポイヤック)
シャトー オー ブリオン(グラーブ地区)
右岸の2つの有名地区
右岸にはシャトー ペトリュス(ポムロル地区)など有名ワインが多数。右岸は基本的に石灰岩と粘土の土壌で、メルロー種(Merlot)が主導権を握っています。
●サンテミリオン地区 St.Emilion
穏やかな気候と複雑な土壌からエレガントなワインの生産
AOC St.Emilion
●ポムロール地区 Pomerol
メルローの個性を頂点に極めた特異な粘土質土壌の地区
AOC Pomerol
まとめ
広大で種類も多いボルドー地区ワインは大まかに右岸と左岸に分けて考えるとその特徴を覚えやすく、好みも分かれます。どちらが好みか覚えておくとよいでしょう。
フランスのワイン2大産地でありながら、ブルゴーニュワインと全く異なる特徴を持つボルドーワイン。フランスの奥の深さに関心します。
左岸メドック地区のマルゴーです。
コメントを残す