ブルゴーニュワインはなぜ隣の畑でこんなに味が違うの?、「コート ドールにみる地質と味わい」シンポジウム

石灰岩とアンモナイト

ブルゴーニュワインをテイスティングしていると、同じ村の同じAOC(格付け)でも驚くほど異なる香りや味わいの時があります。もちろん醸造方法やミレジム(ヴィンテージ)、テロワール(土壌や気候などの自然条件)など様々な要素によるものですが、それだけではないようです。

 

なぜ隣の畑なのにこんなに味わいが違うの?

 

「なぜ隣の畑なのにこんなに味わいが違うの?」この疑問の答えのヒントになるシンポジウムでした。

今回日本輸入ワイン協会主催の「コート ドールにみる地質と味わい」シンポジウムに参加いたしました。

ぶどう畑の土質とワインの質との関係については、まだ科学的に有意に証明されるにいたっていません。しかしながら、数年前からブルゴーニュではワイン生産者団体やワイン生産者では、地質学者による地質図づくりをはじめました。積極的に地質図作成の活動をしており、ジュヴレなどの地質図を完成させた地質学者のフランソワーズ ヴァニエ女史およびドメーヌ ド モンティーユとシャトー ド ピュリニィ モンラッシェ当主のエティエンヌ ド モンティーユ氏によるシンポジウムでした。

「テロワール」(土壌や気候などの自然条件)といいながら、今まで生産者も自分の畑の地下がどうなっているか正確には知らないのが現状でした。この試みによって村ごとに少しずつ地質図が作られてきており、このプロジェクトは現在も進行中です。

 

数億年をかけて石灰岩が集積したコート ドール

数億年もかけて、様々な異なる種類の石灰岩が集積したのが、コート ドールです。2億3千年前(ジェラシック期)、熱帯性(トロピカル)の浅瀬の海でウミユリやサンゴ、ある時期は牡蠣が死後分解されず海の底に堆積していきます。億年の時間をかけて後に堆積岩となりました。

その後アフリカ大陸のプレートがヨーロッパ大陸のプレートに衝突し、そのエネルギーによりヨーロッパにアルプス山脈が形成されました。そしてその強い圧力によりアルプス山脈の西側に約60kmにわたる細長い丘、コート ドールを作りました。まさに「地球のエネルギーがあふれ出る裂け目」です。

200万年前以降氷期と間氷期を繰り返しながら丘の上の氷河が溶け、岩を削り、丘の下へ押し流されることで、たくさんの谷(コンブ combs、背斜谷)が出来上がりました。このコンブが風通し、気温、日照角に大きく影響し、重要な役割を果たしています。コンブから沖積土が流され、扇状地として広がった跡には集落が形成され、この土壌には昔からよい畑がないとされてきました。

つまり丘の下は水分が多すぎ、丘の上は乾いていて、涼しすぎます。丘の中くらいが一番水分バランスがよく、日照条件もよいため、多くの特級や一級は丘の中くらいに位置しています。斜面のどの位置にあるかによって階級が決まるのです。テロワールは「水はけ」が重要だと強く語っていました。

 

「テロワール」の物理的な組成は粘土と石灰石

 

過去2000年にわたって、「テロワール」の物理的な組成は粘土と石灰石で形成された堆積岩でできています。様々な気象変化を経て、岩石が浸食や崩壊を繰り返し、モザイクのような異なる数多くのクリマ(ブルゴーニュのブドウ畑)を生み出しました。クリマごとに異なる石灰石質の分布がみられます。まさに奇跡的な条件ですね。

この画像はフランソワーズ ヴァニエ女史が調査の時に収集した石灰岩のサンプルです。畑の区画によっては単一の石灰岩のこともあり、畑の区画によっては複数の石灰岩がミックスしていることがわかりました。

複数の石灰岩がミックスしている方が味わいが複雑で美味しいワインができるというお話もお聞きしました。

クリマごとに異なる石灰石質の分布がある

 

「なぜ隣の畑なのにこんなに味わいが違うの?」その答えは「クリマごとに異なる石灰石質の分布があるから」のようです。

シンポジウムの最後には2つのワインのテイスティング会が行われました。
モンティーユ氏の畑 Domaine de Montille(ドメーヌ ド モンティーユ)から

同じ2009年のPommard 1er cru

1.Les Rugiens-Bas  ラドワ石灰岩(Ladoix Limstone) 他
2.Les Pezerolles Oobioclastiques石灰岩(ウーライトと貝片が多い)

複数の石灰岩がミックスしているLes Rugiens-Basの方が私は好きでした。

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まとめ

知れば知るほど奥の深さを感じます。モンティーユ氏は、個人的には地質学的にあまり明確に解明されない方がよいとおっしゃっていました。ベールに包まれた神秘的なところがある方が、ワインをより楽しめるからとのことです。あくまでもワインは人生を楽しむためのものですよね。

下記のクリマの地図がバイブルとして醸造所に置いてありました。

上記の日本語版「地図でみるブルゴーニュ・ワイン〔改訂新版〕」で詳しい細分化されたぶどう畑の地図が見られます

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