アンリ ジャイエ氏、ブルゴーニュの神様と呼ばれる醸造家

HenriJayer-アンリジャイエ氏

21世紀最高の醸造家と言われるアンリ ジャイエ氏(Henri Jayer 1922-2006) なくして、今のブルゴーニュワインはなかったともいわれる理由とは?

ブルゴーニュに革命を起こした偉大な人物

ヴォーヌロマネ村に生まれ、ディジョン大学で醸造学の資格を取得。エシュゾー村などに位置する3haの畑を譲り受け、1950年代から自身の名でワインを造り始めました。「よいワインはよいブドウの樹から生まれる」現在では当たり前のように思われますが、これを先導したのがアンリ ジャイエ氏でした。その手から生まれたワインは調和がとれていて、他に類がないほどの気品と純粋さを備えています。

1970年代に品質の低いワイナリーが目先の利益を求めてブルゴーニュが迷走していたことがありました。ブルゴーニュであれば、なんだって売れるという考えのワイナリーもいました。この大量生産によるピノノワールの低品質化の歯止めに貢献したのがアンリジャイエ氏です。このときピノノワールの品種の持つポテンシャルを飛躍的に上げ、ブルゴーニュのワインブランドを確固たるものにしました。

アンリ ジャイエ氏はブルゴーニュ地方の栽培と醸造法に重大な革新をもたらしました。2006年に亡くなりましたが、後継者たちに引き継がれ、ブルゴーニュのブドウ栽培は今もアンリ ジャイエ氏の教えが生きています。「ブルゴーニュの神様」と呼ばれています。他界してから、そのワインの価格の高騰はとどまるところを知りません。

リュット レゾネ(lutte raisonnee、減農薬栽培) 、畑での化学肥料の使用を最低限に抑える

アンリジャイエ氏は自然のプロセスを尊重することを主張し、ブドウの樹にはストレスと与えことが大事だと考え、有機栽培に近い自然な耕作方法、リュット レゾネを実践していました。

化学肥料を使うとブドウは根を伸ばさなくなり、自然な土壌の地質学的バランスが崩れてしまいます。どの畑のブドウも同じ養分を取ることになり、画一化が進んだ結果、テロワールが全く尊重されなくなります。殺虫剤を大量に使用するとそれは土に蓄積します。

土中の酸素が欠乏しないように、昔のように年に5回土を耕していました。酸化物がなければ樹は栄養失調になり、肥料が必要になります。昔のように畑仕事を愛することが大事だと考えました。現代のテクノロジーを駆使すれば、どんなブドウでもまずますのワインに仕立てることができるけれど、そんなワインにはがなく、画一的なコカコーラのようなものでしかないと。

つまり今注目されている自然派ワインをひと昔前にすでに実践していました。

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低収量によるブドウ品質の向上

アンリジャイエ氏は厳しい収量制限を自らに課したことでも知られています。1950年代にすでにそれを実践した最初の人物でした。1970年代になりDRC社など他の賛同者が表れ、支持されました。

ブドウを実らせすぎるのは禁物、厳しい剪定が必要であると考えました。果実が多すぎると夏の太陽によって皮が固くなり、タンニンが荒々しくなってピノノワール本来の良さが消えてしまう。1株から5~8房の果実を守りました。ブドウの品質は剪定の良し悪しにかかっていると。苗木も収量が少ないものを選んでいました。他のドメーヌがまだ収量増加=収入増加に走っていた時代です。

つまりピノノワールの品種本来の低い生産性を尊重することです。よいブドウを収穫することが、良質のワインを造る上では不可欠の条件となり、そのためにブドウをよく手入れして収量を低く抑え、空気の通りをよくすることで病虫害から守ることができ、ぶどうの樹の寿命も長くなります。

アンリジャイエ氏が厳しい収量制限を極限まで追求した結果、理想的な凝縮度、妙なるフィネス、長期熟成可能なワインが出来上がり、ワイン愛好家や評論家に支持されました。

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選果収穫と選果台の使用

アンリジャイエ氏は収穫の際の基準も厳しいものでした。腐敗果や未熟果は決して収穫籠に入れないように注意を払いました。「腐りかけているぐらいでも、迷わず捨ててしまえ」というのが基準でした。

また運搬用の箱にたくさんブドウを詰めすぎないように注意をしていました。一気に大量に運んでしまうとブドウに傷がつくリスクが大きく、その結果ブドウの酸化が進み、最初から茶色っぽいワインとなる危険性が高くなると考えました。そのため籠や小箱を使って手作業での摘み取りをおこなっていました。

また1980年代の終わりに、いち早く選果台(照明がついたベルトコンベア)を採り入れました。ここで更に腐敗果や未熟果を取り除きました。いいワインを造りたいのなら、生産量を気にしないこと。平均的な年でもブドウの20%は捨てていると言っています。

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果梗(かこう)はすべて取り除く

ブルゴーニュでは大部分の作り手がすでにブドウの一部あるいは全部を除梗しています。

アンリジャイエ氏は果梗はすべて取り除いていました。果梗はマストに必要な要素をもたらすものではないとしています。果梗が十分に熟することはめったになく、通常は収斂味(しゅうれんみ)が強くとげとげしいタンニンしか含まれていないため、取り除くことで果実味を壊さないような柔らかいタンニンが得られ、ワインの寿命を縮めることもないとかんがえました。

発酵前の醸し(かもし)、低温マセラッション( maceration)

発酵前のブドウを低温で果汁(液体)に果皮や種(個体)を漬け込んで果実味を引き出す製法です。最初は細胞の中に守られていた赤色色素(アントニシアン)が、4~6日の間に徐々に溶け出してきます。発酵タンクに運ばれた後、ブドウが潰れてしまうのでポンプを使わずに、発酵無しでマセラッションを行いました。タンク内の温度は15度前後にしておき、ルモンタージュ(remontage, ポンピングオーバー、下部から液体を吸い上げ、上部から噴霧)をしっかりとしていました。

低温マセラッションのあとゆっくりとアルコール発酵に移します。低温マセラッションは香りを引き出し、年月が過ぎても色あせることのない非常に美しい色を作りだしました。

低温マセラッションは多量の亜硫酸を投入しないと、色の出方が悪く、さらに酸化のリスクもあるといわれていました。しかし、アンリジャイエ氏は品質の高い健全なブドウを使っていたため、少量の亜硫酸の添加で済ましていたのです。この醸造方法は革命的ですが、根本的に「安全で健全、高品質なピノノワール」があってこその製法といえます。

アルコール発酵には自然酵母を使用

アンリジャイエ氏は自然酵母のみを使用していました。自然のなすがままにすることで、ワインに特徴と個性を与えています。発酵をスタートさせるのに選抜酵母を添加しなくてもアルコール発酵は自然に始まります。ブドウについている自然酵母は最良のタイミングと最適の温度を選んで活動を開始します。選抜酵母で造られたワインはどれも似たような味になり、テロワールの違いが覆い隠されてしまいます。

 

濾過しない(ノンフィルター)

清澄(せいちょう)も濾過(ろか)もしていませんでした。収穫の際にブドウを厳しくより分けて、マストに腐った果実が入り込まないようにしているからです。そのためペクチンがワインの中に浮遊することもなく、瓶詰めでき、樽の中と同じ状態にワインを保つことができます。果実味も骨格もタンニンも失わずにすみます。ワインが完璧に澄んでいれば瓶内で澱(おり)が生じる恐れもなく、長期の熟成も可能になります。

まとめ

 

アンリジャイエ氏は科学技術を駆使した醸造方法は、技術的には完成されているが、欠点はないが個性もないようなワインが出来上がると考えていました。ワインが平凡になり、単なる消費財に変わり果ててしまうプロセスであると危惧していました。つまりブルゴーニュワインは単なる消費の対象ではなく、テロワールやヴィンテージの違い、作り手の違いなどを楽しむ「多様さ」が魅力だと考えています。ブルゴーニュワインの奥の深さに感動し、その魅力に獲りつかれるのはこの「多様さ」があるからで、これからも守ってほしいと思いました。

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